弁護士や司法書士、税理士、社会保険労務士などの「士業」と呼ばれる職業の方は、
お客様から報酬をいただく場合、報酬から所得税が差し引かれて入金されます。
これを「源泉徴収」といいますが、どのような場合に源泉徴収され、どのような場合に源泉徴収されないのか確認しておきましょう。
源泉徴収が必要な士業
自分は対象?
源泉徴収が必要な士業は、
弁護士(外国法事務弁護士含む。)、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、測量士、建築士、不動産鑑定士、技術士そのたこれらに類する政令で定めるものの業務に関する報酬又は料金
参照:所得税法 第二百四条二(源泉徴収義務)
上記の「士業」について、源泉徴収を行う必要があります。
行政書士が入っていないので、注意が必要ですね。
源泉徴収をするのは、支払う側のお客様
源泉徴収を行うのは、士業に対する「報酬・料金」を支払う側の会社や個人事業主になります。
つまり、「お客様」が源泉徴収義務者となっているか、なっていないかを確認する必要があります。
- 法人…源泉徴収義務あり
- 個人事業主…従業員を雇って給料を支払っている個人事業主の場合、源泉徴収義務あり
ただし支払を「受ける」側が、源泉徴収が必要な報酬・料金等に該当する場合であっても「法人(税理士法人や弁護士法人など)」の場合には、源泉徴収する必要はありません。
法人又は個人事業主が、源泉徴収の対象となる「士業」へ報酬を「支払う」場合に、源泉徴収を行うこととなります。
源泉徴収する義務がある報酬に対して、源泉徴収をしなかった場合には、「支払う」側の法人や個人事業主にペナルティが課せられます。
参照:源泉徴収義務者
源泉徴収する・しない~請求書を発行する相手先を確認しよう~
士業の場合、取引先となるのは法人や個人、個人事業主と様々です。
請求書を発行する相手先が「法人」、「個人」、「個人事業主」で源泉徴収税額を記載する・しないが変わってきます。
報酬を支払う側がわかっていなければいけない規定ですが、分かっていない場合も多く、請求書を発行する「士業」側で源泉徴収するかしないか、把握しておきましょう。
法人から報酬を受け取る場合
源泉徴収をする義務があるので、「源泉徴収あり」の請求書を発行します。
個人から報酬を受け取る場合
源泉徴収義務はないので、「源泉徴収なし」の請求書を発行します。
個人事業主から報酬を受け取る場合
個人事業主から報酬を受け取る場合、2パターンに分かれます。
- 源泉徴収義務がある個人事業主(従業員を雇っている場合)…源泉徴収義務があるので、「源泉徴収あり」の請求書を発行します。
- 源泉徴収義務がない個人事業主(ひとりで仕事をしている場合)…源泉徴収義務はないので、「源泉徴収なし」の請求書を発行します。
弁護士の場合
- 法人から法律相談を受けた…源泉徴収ありで発行。
- 個人から離婚相談を受けた…源泉徴収なしで発行。
- 個人事業主(従業員を雇っている)から損害賠償の依頼を受けた…源泉徴収ありで発行。
- 個人事業主(ひとりで仕事をしている)から損害賠償の依頼を受けた…源泉徴収なしで発行。
司法書士の場合
- 法人から設立登記の依頼を受けた…源泉徴収ありで発行。
- 個人から相続の不動産登記の依頼を受けた…源泉徴収なしで発行。
- 個人事業主(従業員を雇っている)から簡易裁判の依頼を受けた…源泉徴収ありで発行。
- 個人事業主(ひとりで仕事をしている)から簡易裁判の依頼を受けた…源泉徴収なしで発行。
その他の士業についても、相談を受けた相手先がどのパターンに該当するのか確認しましょう。
まとめ
源泉徴収の義務がある・ないは、報酬を支払う側の問題で、実際には請求書に源泉徴収税額の記載がなくても、源泉徴収が必要な報酬の場合には源泉徴収すべきです。
ですが、支払う側が分かっていない場合も多く、請求書に記載されている通りに支払ってしまう場合があります。
源泉徴収しなければならない報酬に対して源泉をしていない場合、ペナルティを受けるのは支払う側のお客様になってしまいます。
請求書を発行する側の士業でしっかり源泉徴収の有無を確認し、請求書を発行するようにしましょう。