自宅周辺には、お寺が数軒密集しています。
よく、「お寺は税金がかからないから儲かる」と言われていますが、本当にそうなのでしょうか?
お寺に関する税金についてサクッと解説します!
法人税編
お葬式や法事といったメインの事業(宗教活動)
お寺といえば、お葬式や法事、お盆といった行事を思い浮かべますね。
こういった事業(宗教活動)の際に、「お布施」などをお坊さんに渡しますが、お寺の主な収入源はこの「お布施」です。
宗教活動にかかる収入は、法人税では非課税とされています。
物販や駐車場を運営・建物の貸付けをしている場合
お寺で、絵葉書や暦、キーホルダーなどのお土産を買ったことがある人がいるかもしれません。
こういった絵葉書や暦、キーホルダーなどのみやげ物といったものには法人税が課税されます。
また、お寺は土地を持っていることが多く、時間貸しの駐車場の運営や敷地内に建物を建てて貸付けをしている場合もありますが、こういった場合にも法人税が課税されます。
法人税が課税される・されない、法人税の税率について
法人税が課税される・課税されないの境界線
お寺は、法人税の世界では「公益法人等」という法人に区分されます。
宗教活動(お葬式や法事、お盆など)に係る部分は、法人税がかからない非収益事業とされています。
絵葉書や暦、キーホルダーの販売や駐車料金を取るような駐車場の運営は、一般的な事業会社も事業として行っていますよね。
一方で法人税が課税される、一方で法人税が課税されないとなると公平性が保てなくなります。
一般的な事業会社と競合するような事業には、公平性の観点から収益事業として課税するようになっています。
法人税法では、収益事業として34業種を明示しています。(継続して事業場をもって行われるもの)
収益事業34業種
- 物品販売業
- 不動産販売業
- 金銭貸付業
- 物品貸付業
- 不動産貸付業
- 製造業
- 通信業
- 運送業
- 倉庫業
- 請負業
- 印刷業
- 出版業
- 写真業
- 席貸業
- 旅館業
- 料理・飲食店業
- 周旋業
- 代理業
- 仲立業
- 問屋業
- 鉱業
- 土石採取業
- 浴場業
- 理容業
- 美容業
- 興行業
- 遊技所業
- 遊覧所業
- 医療保健業
- 技芸教授業
- 駐車場業
- 信用保証業
- 無体財産権の提供業
- 労働者派遣業
一般企業と比べ法人税の税率が低い
資本金が1億円以下の普通法人(中小法人)の場合、課税所得が年800万円以下の部分は19%、年800万円を超える部分は23.2%となっています。
それに対し、お寺などの公益法人等の場合には、収益事業の所得に対して19%となっており、一般企業と比べ法人税の税率は低く設定されています。
所得税編
給料
お坊さんは、お寺から給料をもらう形で生活をしています。
お布施=お坊さんの直接的な収入になるわけではないのです。
お坊さんは給料をもらうことで、個人として所得税を納税しています。
また、お寺がお坊さんに給料を払うということは、その給料から所得税を天引き(源泉徴収)することになります。
年末にはお坊さんの年末調整をする必要があります。
源泉所得税の納付がある(源泉徴収義務者)
給料から源泉徴収した所得税は、お寺が毎月又は半年に一度税務署に納付しています。
税理士や弁護士といった士業に報酬を支払う場合にも源泉徴収することになります。
消費税編
消費税は、「消費」という行為に対して課税されます。
法人税のように、非収益・収益という分け方ではなく、消費税の課税対象かどうかで判断します。
お葬式や法事の際にもらうお布施は、「消費」という行為ではないため、消費税法上は「不課税」という扱いになります。
絵葉書や暦、キーホルダーの販売や、時間貸し駐車場からの収入は、消費税が課税されます。
敷地内に建物を建てて賃貸する場合には、居住用であれば非課税、事業用であれば課税となります。(法人税法上は、居住用・事業用どちらも収益事業)
お寺であっても、課税対象となる売上が1,000万円を超える場合には、消費税を納める義務があります。
まとめ:実は複雑
一般的なお寺は、メインの宗教活動だけを行っている場合には法人税は課税されません。
お坊さんに対する給与の支払いに関する源泉所得税を納付するといったところでしょうか。
お寺を取り巻く環境も今と昔ではずいぶん変わってきており、お寺を維持していくために土地を有効活用して駐車場を作ったり、納骨堂を作ったり、物販を行ったり様々な方法で収入を確保しようとしています。
メインの宗教活動(非収益事業)以外にも収益事業を行ったりすると、法人税が課税される場合もあります。
法人税の税率の面では、他の事業会社と比べ低い税率になっているため優遇されていますが、一般言われている「お寺は税金がかからないから儲かる」というわけではありません。
宗教法人は一般の事業会社とは違う独特の会計処理を行いますし、収益事業を始めた場合には、非収益事業と収益事業とを細かく区分しなければなりません。
実は複雑という一面も持ち合わせています。
サクッとまとめてみました!