社員やアルバイトを雇い入れた際に、扶養控除等(異動)申告書を渡して書いてもらっていますか?
入退社が多い業種の場合、入社時に扶養控除等申告書を書いてもらっていないというケースがよくあります。
扶養控除等申告書の役割を確認しておきましょう!
扶養控除等(異動)申告書と源泉徴収の仕組み
源泉徴収する税額の区分は3つ
給与から天引きする源泉所得税は、「給与所得の源泉徴収税額表」によって求めます。
給与計算ソフトでは、この表が組み込まれているので、給与の額面・社会保険の金額・扶養人数が決まると自動で計算されます。
本来は、この源泉徴収税額表を見て、給与から天引きする源泉所得税の金額を求めます。
実際の源泉徴収税額表はこちら。
参照:給与所得の源泉徴収税額表(2019年分)
表をよく見ると、「甲」、「乙」という区分があります。
この表にはありませんが、もう一つ「丙」という区分もあります。
甲と乙では源泉徴収する税額が違います。
給与等の金額が「88,000円以上89,000円未満」の欄を見てみると、
- 甲欄(扶養0人)では、130円
- 乙欄では、3,200円
となっています。
では、この「甲」、「乙」、「丙」の違いはどこにあるのでしょうか?
それは、扶養控除等申告書の提出の有無にあります。
給与所得の源泉徴収税額表は2種類あり、「月額表」、「日額表」とあり、さらに扶養控除等申告書の提出の有無、日雇いかどうかによって、「甲」、「乙」、「丙」の区分に分けて源泉徴収税額表を決定します。
参照:給与所得の源泉徴収事務 税額表の適用区分
甲欄を適用するためには、扶養控除等申告書を記入して提出してもらう必要があります。
扶養控除等申告書を書いてもらうタイミングは?
扶養控除等申告書は、入社したタイミングで記入してもらうことになります。
毎年最初の給与の支払いを受ける日の前日までに提出することとなっており、中途就職の場合には、就職後最初の給与の支払いを受ける日の前日までに提出することとなっています。
参照:給与所得の源泉徴収税額表(提出期限)より
甲、乙、丙が決まらないと、源泉徴収する区分が決定できないので、入社したタイミングで記入してもらう必要があります。
扶養控除等申告書の提出がない場合には、「乙」欄で源泉徴収することになります。
2か所で働いている場合には?
扶養控除等申告書は、1か所でしか提出することが出来ません。
ダブルワークの方を雇用する場合には、どちらに提出するのかしっかり確認しておきましょう。
提出がない場合には、「乙」欄で源泉徴収する税額を計算します。
また、2か所から給与をもらっている場合には確定申告が必要があります。
扶養控除等申告書には何を書く?内容に異動があった場合には?
書くコト
扶養控除等申告書には、名前や住所、生年月日といったものを記入します。
それ以外に、控除を受けるための内容を記載します。
寡婦(寡夫)控除、勤労学生控除、障害者控除、配偶者控除、扶養控除の情報を書いていきます。
これらの情報は、上記の源泉徴収税額表の「甲」欄の扶養親族等の数を決めるための情報になるので、キチンと記入してもらいましょう。
異動があった場合
結婚して配偶者控除に該当する、親を扶養することになったなど、最初に提出した扶養控除等申告書の内容に異動があった場合には、扶養控除等申告書を異動があった日後、最初に給与の支払を受ける日の前日までに提出します。
扶養親族等の数に変更があると、源泉徴収される税額にも変更になります。
出し忘れた場合
期中に異動があっても出し忘れるという場合もあります。
そういった場合でも、年末調整の際にキチンと異動状況を記入すれば正しい税額で計算され精算されます。
扶養控除等申告書は会社で保管
会社で保管
扶養控除等申告書は、給与の支払者を経由してその支払者の源泉所得税の納税地の所轄税務署長に提出することになっていますが、税務署長から提出を求められるまでの間は、提出を受けた給与の支払者が保管することになっています。
保管期限は、扶養控除等申告書の提出期限の属する年の翌年の1月10日の翌日から7年間保管する必要があります。
基本的に税務署に提出する必要はないので、会社で7年間保管します。
税務調査でチェックされる
提出がなければ扶養控除等申告書がなくても大丈夫ではないかと思われるかもしれませんが、税務調査の際に扶養控除等申告書はチェックされます。
扶養控除等申告書がないのに甲欄で源泉徴収していると乙欄の税額と比べて少なくなってしまうので、追加で納付する必要やペナルティーを受けることがあるので、キチンと記入してもらい保管しておくようにしましょう。
まとめ
扶養控除等申告書は、給与計算をする上で源泉徴収する税額を決定するのに必要な書類になります。
従業員を雇い入れる際に、社会保険や雇用保険の手続きもありバタバタしがちですが、扶養控除等申告書もキチンと書いてもらうようにしましょう。
入退社が多い業種になると、入社時に記入してもらっていないと、既に退職していて書いてもらえないということにもなってしまいます。
入社時のチェックリストや配布物をまとめておくと、漏れがなくなりますよ!
扶養控除等申告書の役割をまとめてみました。